ウイルス性結膜炎とは

ウイルスの感染によって引き起こされる結膜炎です。結膜炎の中ではアレルギー性結膜炎と並んで、患者さんの多い病気です。結膜が充血し、目やにが出たり、涙が自然に出て、ゴロゴロした目の痛みが出てきます。原因のウイルスには、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルスなどがあります。
結膜炎を起こすウイルスには多くの種類があり、ウイルスの種類が違えば症状や経過も違います。また、ウイルスには目への伝染力の強いものと弱いものがあり、伝染力の強いウイルスによる結膜炎は『はやり目』といいます。
感染して症状が出るまで多少時間がかかります。
いずれも他人からウイルスが体に入って発症するものであり、他人に感染させる力も強く、家族内感染や学校内の集団感染などの原因になります。

ウイルス性結膜炎の症状

流行性角結膜炎

感染力が強く、昔から一般に「はやり目」と呼ばれているものです。アデノウイルス(8型、19型、37型、54型など)によって起こります。
流行性といわれるように、非常に伝染力の強い結膜炎です。
症状としては、結膜が充血し目やにや涙がたくさん出て、眼痛を伴うことがあります。アレルギー性結膜炎と違って、かゆみはほとんどありません。耳の前や顎の下にあるリンパ節が腫れることもあります。症状の強い人では、結膜の表面に白い炎症性の膜(偽膜)ができることがあり、特に小さなお子さんでは成人より生じやすいといわれています。
この病気の潜伏期は約1週間から10日です。最初は片目だけに発症しても、数日中にもう片目に症状が出現することがあります。通常、発症してから約1週間に病状のピークがあり、その後徐々に改善してきますが、炎症が強い場合は黒目(角膜)の表面に小さな濁りが残ることがあります。
これは時間とともに徐々に消えていきますが、副腎皮質ステロイド薬の目薬を使うことがあります。
一度混濁ができると、数カ月?数年にわたって混濁が消えないことがあります。

咽頭結膜熱

プールなどで広まり、喉が赤くなり、高熱が出たりするのでプール熱とも呼ばれます。
アデノウイルス(3型、4型、7型など)によって起こる結膜炎です。この結膜炎は、白目の充血や目やにといった目の症状は流行性角結膜炎より弱い反面、のどの痛みや39度前後の発熱などの呼吸器系の症状がみられます。潜伏期や経過などは流行性角結膜炎と似ています。

急性出血性結膜炎

エンテロウイルス(70型)やコクサッキーウイルス(A24変異型)などエンテロウイルスの仲間によって起こる結膜炎です。症状は急性で、充血、目やに、ゴロゴロ感などが出現し、白目に出血がよくみられるために、この病名がついています。潜伏期は約1日で、目の痛みで始まり、白目に真っ赤な出血が出現しますが、早くて数日、長くても数週間でだんだんと消えていきます。非常に稀ですが、この結膜炎が治る頃に合併症として神経麻痺が起こることがあります。かつてはアポロ病などの名前で呼ばれ、世界中で大流行を起こしたことがありましたが、我が国では大きな流行は、沖縄県を除き最近では起きていません。

ヘルペス性結膜炎

単純ヘルペスウイルスによる結膜炎で、お子さんが初めてヘルペスウイルスに感染したときにみられることが多い病気です。症状からは、アデノウイルスによる結膜炎と区別できないですが、両目が侵されることは少ないです。時に目の周りの皮膚に小さな水疱がみられることもあり、この場合はヘルペスに対する軟膏薬によって治療する必要があります。

ウイルス性結膜炎の治療

ウイルス性結膜炎に対しては、今のところ残念ながら特効薬はありません。感染したウイルスに対する抗体が体内で作られるのを待つしかありません。
通常は炎症を抑え、細菌による二次感染を防止するための目薬を使用します。ヘルペスウイルスに対しては抗ヘルペスウイルス作用を持つ薬がありますが、症状が結膜炎だけの場合、迅速診断キットなどではヘルペスを検出できないために、治療できない場合がほとんどです。まぶたに発疹がある場合には抗ウイルス薬の眼軟膏を用います。また症状によっては抗ウイルス薬の内服や点滴治療を併用することもあります。

薬物療法

最初から「細菌性」と分かることは少ないのですが、明らかな花粉症以外は抗菌剤の点眼を処方して治療することが多いです。結膜炎の中には細菌性結膜炎が多々ありますが、特別な検査で細菌性と診断して、特別な治療を行わなくてもほぼ全ての結膜炎が治癒しています。
最近の抗菌薬は非常に良いため、多くの結膜炎の中に細菌性結膜炎が紛れていても、抗菌薬のみで治癒してしまっていると考えられます。